むずかしい値動きを、やさしい言葉で。
Today's Market
Market Snapshot — 主要指標
来週16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)を前に、市場が織り込む利上げ確率がここへきて8割台後半まで急上昇している。CME FedWatchをはじめとする複数の指標が同じ方向を示しており、わずか1カ月前の8月中旬時点では3割前後にとどまっていたことを踏まえると、変化の速さが際立つ。きっかけは8月の雇用統計が市場予想を大幅に上回ったことに加え、11日発表の8月消費者物価指数(CPI)のコア指数がなお市場予想を上回る水準で着地したこと。FRBは2025年に3回の利下げを行った後、2026年に入ってからは一度も動かず様子見を続けてきたが、5年連続で目標の2%を上回るインフレと、中東情勢に端を発した原油高が、その「様子見」の緒を締め上げている格好だ。
輪をかけて注目度を上げているのが、同じ週の17〜18日に開催される日銀の金融政策決定会合だ。現在1.00%の政策金利を1.25%程度まで引き上げるとの観測が市場では9割前後まで織り込まれており、実現すれば1995年4月以来およそ31年半ぶりの水準となる。植田和男総裁は今月初めの会見で「次回会合を含め毎回しっかり議論したい」と述べるにとどめているが、市場はすでに利上げをほぼ既定路線とみて動いている。FRBと日銀という世界の二大中央銀行が、利下げではなく利上げで足並みをそろえるかもしれないという構図は、ここ数年ではほとんど例がない。
この「二重の利上げ」観測がドル円相場を綱引きのような膠着状態に押し込んでいる。理屈の上ではFRBの利上げはドル高・円安要因、日銀の利上げは逆に円高要因として働くため、双方の観測が同時に強まると、方向感の乏しいもみ合いになりやすい。実際にドル円は9月上旬に一時152円台まで円高が進む場面もあったが、直近は153円台半ばでの推移に落ち着いている。来週はどちらの中央銀行が「動く」か、あるいは「動かない」かで、この綱引きの均衡が一気に崩れる可能性がある一週間になる。
教科書的には、利上げ観測の急上昇は無利息資産であるビットコインのような暗号資産にとって逆風になりやすい。ところが週末にかけてのビットコインは77,000ドル台前半でほぼ横ばいの値動きにとどまり、目立った売り込みは見られなかった。株式市場が来週の大型イベントを前に様子見姿勢を強めるなか、暗号資産市場は先に織り込みを終えていたのか、あるいは金融政策よりも需給要因の影響が強い局面に入っているのか、いずれにせよ「利上げ観測=リスク資産総売り」という単純な図式にはなっていない点は今週のちょっとした「へぇ」ポイントと言えそうだ。
原油(WTI)は、イラン国営メディアがオマーンで湾岸諸国と協議を行うと伝えたことをきっかけに週後半に反落し、1バレル100ドル前後で週を終えた。それでも週間では1割近い上昇となっており、中東情勢の緊張自体が解けたわけではない。VIX恐怖指数も週前半の17台後半から15.84まで低下し、いったんは警戒感が和らいだ格好だが、来週のFOMC・日銀会合という2大イベントを控え、この落ち着きが続くかどうかは未知数だ。金(NY金)も4,360ドル前後で膠着しており、株式・為替・コモディティのいずれもが「様子見」の一語に集約される週末となった。
Movers — きょう大きく動いた銘柄・資産
FOMC利上げ観測が過去最高水準に迫るなかでも大きく崩れず、77,000ドル台前半で高止まり。金融政策よりも需給主導の値動きが続いている可能性がある
きょうの用語解説
ニュースで見かける「市場は利上げの確率を◯割織り込んでいる」という表現は、誰かにアンケートを取った結果ではない。CME FedWatchのようなツールは、FF(フェデラルファンド)金利の先物価格から逆算して、この数字を機械的に算出している。FF金利先物は「将来のある時点の政策金利がいくらになるか」を投資家同士が売買する市場で、その価格には「政策金利がこの水準になるはずだ」という参加者全員の予想が反映されている。先物の価格が現在の金利水準からどれだけ乖離しているかを見れば、「利上げ(または利下げ)が起きる確率は何%」という形に逆算できる、という仕組みだ。
重要なのは、この数字があくまで「今この瞬間の市場参加者の総意」であって、未来を確実に言い当てるものではない点だ。今回のように、1カ月前には3割程度だった確率が8割台まで跳ね上がることもあれば、逆に会合直前の経済指標ひとつで数字が急変することもある。つまり「織り込み確率」は天気予報の降水確率のようなもので、状況が変わればすぐに書き換わる生き物だと考えたほうがいい。
この数字が急上昇していること自体が、株式・為替市場にとってはすでに一つの材料になる。市場が「ほぼ利上げ確実」と織り込んだ状態で実際に利上げが決まっても、サプライズが小さいぶん値動きは限定的になりやすい一方、もし据え置かれれば「織り込み違い」の反動で相場が大きく動くことがある。来週のFOMCと日銀会合を見るときは、決定そのものだけでなく、決定前にどれだけ市場が「織り込んで」いたかとセットで捉えると、値動きの理由が読み解きやすくなる。
きょうのなぞなぞクイズ