むずかしい値動きを、やさしい言葉で。
Today's Market
Market Snapshot — 主要指標
8日の東京株式市場は、朝方の外国為替市場で円が対ドルで急伸したことに振り回される展開になった。前日夕方に154円台だったドル円は東京時間に入って下げ足を速め、一時152円台後半まで進み、2月中旬以来およそ半年ぶりとなる円高水準をつけた。この急な円高進行を嫌気して投資家心理が一時冷え込み、日経平均株価は寄り付き直後に600円を超す下落に見舞われた。輸出比率の高いトヨタ自動車は一時2.9%安まで売られ、ホンダや村田製作所といった自動車・電子部品の輸出関連株にも同様の売りが広がった。想定為替レートを超える水準まで円が買われたことで、来期以降の採算悪化を織り込んだ動きだ。
もっとも下げは長く続かなかった。前日の韓国総合株価指数の上昇を受けてAI・半導体関連への物色が国内にも波及し、ソフトバンクグループが一時前日比7%超まで買われて約2カ月ぶりの高値をつけた。アドバンテストやキオクシアホールディングスといった値がさの半導体株も底堅く推移し、これら数銘柄だけで日経平均を押し上げる構図が再現された。電線株の一角も物色され、フジクラは2%台の上昇、古河電気工業も小幅高で終えている。結果として日経平均は前日比小幅高で切り返し、3営業日続けての上昇を確保した。
ただし内実は強気一色とは言い難い。東証プライム市場では値下がり銘柄数が値上がりを上回っており、時価総額で加重するTOPIXは前日比0.6%近く下落した。7日の記事でも指摘した「日経平均だけがソフトバンクグループなど一部の値がさ株で持ち上げられ、TOPIXは置き去りにされる」というねじれが、この日はついにTOPIXのマイナス転落という形にまで進んだことになる。2営業日連続で同じ構図が観測されたことは、今の相場の強さが指数全体というよりごく一部の銘柄に依存していることを裏付けている。
米国市場は9/7が労働者の日(レイバーデー)で休場だったため、直近の確定値は4日(金)のものにとどまる。この日は8月の雇用統計が市場予想を大幅に上回ったことで早期利上げ観測が強まり、S&P500・NYダウはそろって下落した一方、フィラデルフィア半導体指数(SOX)はメモリー関連の独歩高で3%超上昇していた。8日の日本市場でみられた「金利には逆風でも半導体だけは買われる」という構図は、この金曜の米国市場の余韻がそのまま続いている形とも言える。米国市場は8日のニューヨーク時間に取引を再開するが、その動向は日本時間の記事執筆時点ではまだ確定していない。
この日の為替市場でもっとも目立った動きは、対ドルで急伸した円だった。日銀高官の発言や、円安是正を促すとも受け取れた米側の発言をきっかけに、日銀が来週の会合で政策金利を1.25%へ引き上げるとの観測が急速に強まり、円売り・ドル買いのポジションを積み上げていた投機筋が一斉に買い戻しに動いた。7月末の日米協調為替介入以降、市場には「これ以上の円安が進めば再び介入があるかもしれない」という警戒感がくすぶり続けており、それが今回の巻き戻しの勢いを増幅させた面もある。金(NY金)はドル建て資産としてはやや軟調で、前日から小幅に値を下げた水準で推移。ビットコインも8万ドル台を回復しきれず、1%強値を下げて7万9千ドル近辺で一進一退となっている。原油(WTI)は中東情勢の緊迫を背景に高値圏を維持し、1バレル92ドル台で底堅く推移した。
Movers — きょう大きく動いた銘柄・資産
韓国株高を受けたAI・半導体関連への物色で一時前日比7%超まで買われ、約2カ月ぶりの高値をつけた。値がさ株として日経平均を大きく押し上げた一方、TOPIXへの寄与は限定的だった。
対ドルで円が半年ぶり水準まで急伸したことを受け、想定為替レートを超える円高による採算悪化を懸念した売りが優勢となった。ホンダなど他の自動車株にも同様の売りが波及。
AI・データセンター向け需要を材料に電線株の一角として買われた。古河電気工業とともに値がさ半導体株の物色の流れに連動した面がある。
フジクラなど電線株の物色に連れて小幅高。個別の新規材料は確認できず、セクター全体の物色の流れに沿った動き。
きょうの用語解説
今日の円急伸は、日銀の利上げ観測という「理由」だけでは説明しきれないほどの急激さだった。ここで効いてくるのが「円キャリートレード」という仕組みだ。日本の金利が主要国に比べて低い状態が続くと、投資家は低金利の円を借りて売り、その資金でより金利の高いドルなど他の通貨や資産に投資して利ざやを稼ごうとする。この取引が積み上がるほど、市場には「円を売ってドルを買う」ポジションが大量に溜まっていく。
ところが、日銀が利上げに動きそうだという観測が強まると、この取引の前提だった「日本の低金利」が崩れかけることになる。含み損を抱える前に手仕舞おうとする投資家が一斉に円を買い戻すため、積み上がっていたポジションの規模が大きいほど、巻き戻しも急激かつ一方向的になりやすい。今日のように「154円を割り込むと下げの勢いが加速した」という値動きは、個々の投資家の判断というより、あらかじめ設定されていた損切り注文(ストップロス)が連鎖的に執行されたことも一因とみられる。円安局面で積み上がったポジションが多いほど、逆回転が始まったときの値動きも大きくなる。これが「なぜわずか数日でここまで動くのか」という疑問に対する一つの答えになる。
きょうのなぞなぞクイズ