むずかしい値動きを、やさしい言葉で。
Today's Market
Market Snapshot — 主要指標
週明け7日の東京株式市場で日経平均株価は寄り付きから買いが先行し、午前だけで一時1,600円超上昇する場面もあった。午後にかけていったん上げ幅を縮める場面もありつつ、終値は前週末比1,300円台高の6万6,300円前後という大幅続伸で着地したもようだ。ただし東証プライム市場の値上がり・値下がり銘柄数はほぼ半々で推移しており、指数の派手な上げ幅ほど市場全体が強かったわけではない。実際、構成銘柄の時価総額で加重するTOPIXは前週末比0.4%高にとどまり、日経平均の上昇率の5分の1程度で終わっている。8月31日や9月4〜5日にも同じような「日経平均だけが跳ねてTOPIXは横ばい」というねじれが繰り返し観測されており、この週明けもまた、ソフトバンクグループや東京エレクトロンといった値がさ株・大型株数銘柄が指数全体を押し上げる構図がそのまま再現された形だ。
きっかけとなったのは2つのニュースだった。一つは、米マイクロン・テクノロジーが広島工場でAI向け次世代メモリーの生産設備増強に乗り出すという報道。総投資額は1兆5,000億円規模とされ、経済産業省が最大5,360億円を補助する枠組みも絡む、日本国内での大型投資案件でもある。もう一つは、マイクロンと並ぶメモリー大手である米サンディスクが、大型株中心の米国株価指数S&P100種に新たに採用されると伝わったことだ。この2つの材料を受け、キオクシアホールディングスは前週末比8.7%高の5万9,200円まで買われ、値上がり率トップは半導体製造装置のレーザーテックで9.7%高。同社は前週末には値がさ株の利益確定売りに押されて反落していただけに、材料次第でわずか1営業日で真逆の値動きになる典型例となった。東京エレクトロンも4.9%高の5万5,930円まで買われ、指数寄与度ランキングではアドバンテストとソフトバンクグループの2銘柄だけで日経平均を約757円押し上げたと集計されている。
先週の東京市場は、木曜の米FRBウォラー理事のハト派発言で金利低下・株高に振れたかと思えば、金曜の米雇用統計の強さで利上げ観測がぶり返すという綱引きが続き、日経平均は週間ベースで約2.1%安、5営業日続落の傷を抱えたまま週を終えていた。週明け早々のこの上げは、その目減り分をほぼ一日で取り戻すだけの勢いがあったことになる。もっとも、値動きの中身が特定の数銘柄に偏っている以上、この勢いがどこまで市場全体に波及するかは見極めが必要だろう。
米国市場は7日、レイバーデー(労働者の日)の祝日で休場のため新しい値動きはない。週明けの日本株の買い材料になったのは、直近の取引日である4日(金)の米国市場の余韻だ。この日は8月の雇用統計が市場予想を大幅に上回る強さとなったことで利上げ再開への警戒が強まり、NYダウ・S&P500は下落。半導体株全体の値動きを示すフィラデルフィア半導体指数(SOX)だけは3.37%高となったが、その中身はマイクロンが6.1%高、サンディスクが11.9%高というように、AIデータセンター向けの需要拡大とメモリー価格の急騰を材料にしたメモリー関連銘柄の独歩高だった。この「金利には弱いが品薄のメモリーは買われる」という金曜の構図が、そのまま週明けの東京市場にも持ち越された格好だ。
為替市場ではドル円が156円台前半でこう着している。先週末にかけて円が若干買い戻された地合いを引き継ぎ、方向感に乏しい展開だ。金は米金利上昇・ドル高を嫌気して金曜に反落した水準からほぼ横ばいで推移している。原油(WTI)は、ホルムズ海峡の緊張の高まりを背景に先週1週間で約9%上昇した1バレル91ドル台の水準を維持しているが、米国市場が休場のため新規の値動きは乏しい。ビットコインは週末を通じて8万ドル前後で小動きにとどまり、株式市場の材料を横目に様子見ムードが続いている。
Movers — きょう大きく動いた銘柄・資産
値上がり率トップ。前週末は値がさ半導体株の利益確定売りで反落していたが、週明けはマイクロンの増産報道・サンディスクのS&P100採用を受けた半導体関連の物色対象に転じた。
提携先の米サンディスクがS&P100種指数に採用されると伝わったこと、マイクロンが広島工場で先端メモリーの増産に乗り出すとの報道が重なり急伸。
指数への寄与度が大きい値がさ株。半導体・メモリー株高の流れに加え、アドバンテストとあわせて日経平均を約757円押し上げる原動力になった。
半導体製造装置メーカーとして、メモリーメーカーの増産・設備投資拡大期待を追い風に買われた。
きょうの用語解説
今日のキオクシア株急伸のきっかけの一つは、業績や決算ではなく「サンディスクが米国のS&P100種指数に採用される」というニュースだった。S&P100はS&P500からさらに時価総額の大きい100銘柄を選んだ指数で、これに採用されると何が起きるのか。世の中には、この指数の値動きにそっくり連動するように運用されるインデックスファンドやETFが大量に存在する。指数の構成銘柄が入れ替わると、これらのファンドは「指数と同じ中身にする」ために、新しく採用された銘柄を機械的に買い、除外された銘柄を機械的に売らなければならない。この、業績への評価とは関係なく指数採用・除外そのものが売買を生む現象を「インデックス効果(指数採用効果)」と呼ぶ。
サンディスク自身がS&P100に採用されて買われれば、それだけでは日本のキオクシア株が動く直接の理由にはならないはずだ。しかし実際には「サンディスクが買われている」というニュースそのものが、事業内容の近いキオクシアにとっての好材料としても受け止められ、投資家の連想買いを誘う。値動きの理由が、業績でも新製品でもなく「株価指数の構成銘柄が入れ替わること」自体にあるというのは、初めて聞くと不思議に感じられるかもしれないが、運用資産の多くがインデックスファンド経由で市場に置かれている現在の株式市場では、日常的に観測される現象だ。
きょうのなぞなぞクイズ