なぜなぞ相場

むずかしい値動きを、やさしい言葉で。

2026年9月6日号

Today's Market

原油、1週間で9%高 ― ホルムズ海峡の緊張が動かした一週間、日経平均は反発でも週間ではまだマイナス

3行まとめ

  • 週末の6日、東京・NY両市場は休場だが、8月31日〜9月4日の一週間を振り返ると、実は主役は日経平均でもS&P500でもなくWTI原油だった。週初にホルムズ海峡で大型原油タンカー2隻が正体不明の飛翔体に相次いで攻撃を受けたことをきっかけに、原油は週間で約9%上昇し1バレル91ドル前後まで駆け上がっている。
  • この地政学リスクの高まりを受け、週明けの米国市場ではエクソンモービルが2.7%高、シェブロンが2.1%高と資源株が真っ先に反応した。ところが週末にかけて主役は交代し、日本のINPEXとENEOSホールディングスは金曜4日にそろって下落。原油高の恩恵株が、当の原油高が続く週の最終営業日に売られるというねじれが生じている。
  • 株式市場全体はもっと複雑な綱引きを演じた一週間でもあった。週半ばはFRBウォラー理事のハト派発言で長期金利が下がり株高に振れたが、金曜の米雇用統計の強い数字が利上げ再開への警戒を呼び戻し、その分をほぼ帳消しにした。結局、週間の騰落率はNYダウが▲0.3%、S&P500が+0.1%、ナスダック総合が+0.4%とほぼ横ばい。日経平均も金曜の806円高にもかかわらず週間では▲2.1%で、5営業日続落の傷を取り戻せなかった。
日経平均
9/4 東証引け時点
65,020.94
前日比▲ +806.46円 (+1.26%)
TOPIX
9/4 東証引け時点
4,103.23
前日比▲ +1.19円 (+0.03%)
S&P500
9/4 NY市場引け時点
7,718.60
前日比▼ -29.11 (-0.38%)
Nasdaq総合
9/4 NY市場引け時点
26,506.99
前日比▼ -76.87 (-0.29%)
NYダウ
9/4 NY市場引け時点
53,414.25
前日比▼ -271.86 (-0.51%)
ドル円
9/6 午前(24時間ベース)時点
156.20
前日比▼ -0.16円 (-0.10%)
VIX恐怖指数
9/4 NY市場引け時点
14.32
前日比▲ +0.01 (+0.07%)
米10年金利
9/4 NY市場引け時点
4.78%
前日比▲ +0.00% (+0.00%)
WTI原油
9/4 NY市場時点
91.22ドル
前日比▼ -0.07ドル (-0.08%)
金価格(NY金)
9/6 午前(24時間ベース)時点
4,455ドル
前日比▲ +26.00ドル (+0.59%)
ビットコイン
9/6 午前(24時間ベース)時点
79,900ドル
前日比▲ +200.00ドル (+0.25%)

GLOBAL今週(8/31〜9/4)を振り返る:ホルムズ海峡危機の再燃と原油9%高

きっかけは8月31日深夜、ホルムズ海峡を航行していた超大型原油タンカー2隻が相次いで飛来体に被弾したことだった。サウジアラビアの海運会社バーリが運航する「シドル」がオマーンのハサブ北東で、Sinokorが運航する「セネガル・プロスペリティー」がオマーン東方でそれぞれ攻撃を受け、いずれもペルシャ湾外に向かう途中だったという。ブレント原油は一時1.9%高の1バレル92ドル24セントまで跳ね、WTIも週を通じて9%ほど値を上げ、4日時点では91ドル前後で推移している。この海峡危機自体は2月28日の米・イスラエルによるイラン攻撃とその後のイラン革命防衛隊による事実上の海峡封鎖から続くもので、7月・8月にも同様の緊張の再燃で海運株や資源株が急伸する場面が繰り返されてきた。今回の攻撃は、くすぶり続けてきたその火種が9月に入って再び燃え上がったことを示している。

この供給不安に最も素直に反応したのは週明けの米国株だった。エクソンモービルは9月1日に2.7%高、シェブロンも2.1%高となり、原油高の恩恵を受けやすい資源メジャーが真っ先に買われた。ところが週の最終営業日となった4日、日本のINPEXとENEOSホールディングスはそろって下落している。INPEXは原油高を追い風に週前半まで4営業日続伸し、約3カ月半ぶりに株価4000円台を回復していたが、4日は利益確定売りが優勢となり2.80%安で終えた。ENEOSも1.93%安。この日のWTI自体はほぼ横ばい(前日比-0.08%)だったことを考えると、供給不安という物語そのものが弱まったわけではなく、週前半に買われすぎた分の巻き戻しが先に出たと見るのが自然だろう。「原油高の恩恵株」と「原油そのものの価格」が、同じ週の中でも必ずしも同じ方向を向くわけではないことを示す一例だった。

株式市場全体を見ても、この一週間は綱引きの連続だった。週半ばにはFRBのウォラー理事がハト派的な発言をしたことで9月の利上げ観測が後退し、米長期金利が低下して株価が持ち直す場面があった。しかし金曜4日、8月の雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想(5万5000人程度)の3倍近い16万2000人増となったことで、利上げ再開への警戒が一気にぶり返し、この日だけでNYダウは271ドル安、S&P500・ナスダック総合も下落した。結果として週間の騰落率はNYダウが▲0.3%、S&P500が+0.1%、ナスダック総合が+0.4%と、荒れた一週間の割には指数自体はほぼ横ばいに収まっている。日経平均も金曜の806円高で5営業日ぶりに反発したとはいえ、その反発はソフトバンクグループとアドバンテストの2銘柄への集中投資という色合いが強く、週間で見れば依然▲2.1%。時価総額加重のTOPIXが週を通じてほぼ動かなかったことも含めて、「原油」「金利」「個別テーマ株」という3つの綱が互いを打ち消し合った一週間だったと言えそうだ。

24H週末の為替・金・暗号資産:材料は出尽くし、様子見ムード

為替市場では土日は主要な取引参加者が少なく値動きが乏しくなりやすいが、ドル円は156円20銭前後と、4日のNY市場引け値(156円36銭)からほぼ変わっていない。金価格は週半ばに一時4540ドル近くまで急伸する場面があったが、週末にかけては4450ドル台まで値を戻している。原油が地政学リスクを背景に高止まりを続けている一方で、金の「有事の逃避先」としての買いは既に一服しているのは対照的で、同じ中東情勢というニュースでも、資産ごとに反応の持続時間が異なることがうかがえる。

暗号資産はビットコインが7万9900ドル前後、イーサリアムが2480ドル前後と、いずれも金曜の水準から小幅に値を上げて週末を迎えている。株式市場が休みの間も24時間動き続けるこれらの資産の値動きは、月曜の東京市場の始まり方を占ううえで手がかりの一つになる。現時点では大きな方向感の変化は見られず、月曜の朝までにホルムズ海峡情勢や中東関連の新たな報道が出るかどうかが、週明けの相場を左右しそうだ。

米国 S&P500構成銘柄より

XOM エクソンモービル
+2.70%

8月31日夜のホルムズ海峡でのタンカー攻撃を受けた原油急伸を背景に、週明け9月1日の米国市場で資源メジャーとして真っ先に買われた。

CVX シェブロン
+2.10%

エクソンモービルと同様、週明け9月1日に原油高を追い風にした買いが入った。

日本 日経225構成銘柄より

1605 INPEX
-2.80%

原油高を背景に週前半まで4営業日続伸し約3カ月半ぶりに株価4000円台を回復していたが、9月4日は利益確定売りが優勢となり反落した。この日の原油相場自体はほぼ横ばいだった。

5020 ENEOSホールディングス
-1.93%

INPEXと同じく週前半の原油高局面で買われていた反動から、9月4日は利益確定売りに押された。

きょうの用語解説

「地政学リスクプレミアム」ってなに? ― 紛争と原油価格の関係

地政学リスクプレミアムとは、戦争や紛争、テロといった地政学的な緊張によって、実際にはまだ供給が止まっていない段階から商品の価格に上乗せされる「不安の分」を指す。ホルムズ海峡は世界の海上原油取引の4分の1近くが通過する要衝で、日本の原油輸入も9割以上を中東に依存している。タンカーへの攻撃自体は個別の事件に過ぎないが、「この先、海峡が本格的に封鎖されるかもしれない」という将来の供給不安が今の価格に前もって織り込まれることで、原油は実際の需給が変わる前から上下に大きく動く。これが今回、WTIが1週間で9%も跳ね上がった主な理由だ。

この「有事のドル買い」と地政学リスクプレミアムは似て聞こえるが指しているものが異なる。有事のドル買いは紛争時に投資家が安全資産としての米ドルに資金を逃避させる為替の現象であり、地政学リスクプレミアムは原油など供給不安に直結する商品そのものの価格に乗る上乗せ分だ。そしてこのプレミアムには「膨らむのも速いが、萎むのも速い」という性質がある。今回、原油高の恩恵を受けるはずのINPEXやENEOSが、原油相場が高止まりしたままの金曜に売られたのも、週前半でこのプレミアムの多くをすでに織り込んでしまい、新しい悪化材料が出ない限り「材料出尽くし」で利益確定売りが優勢になったためと考えられる。地政学リスクは、事態がさらに悪化しない限り、案外早く相場から「値段」として消えていくことがある。

きょうのなぞなぞクイズ

ホルムズ海峡でのタンカー攻撃をきっかけに原油価格が上昇したように、紛争や供給不安が高まった際に商品価格に上乗せされる「不安の分」の価格を何と呼ぶ?