むずかしい値動きを、やさしい言葉で。
Today's Market
Market Snapshot — 主要指標
4日の東京株式市場で日経平均株価は前日比806円46銭高の6万5020円94銭となり、5営業日ぶりに反発した。ただし値上がりの中身を見ると、ソフトバンクグループが前日比11.78%高の5590円まで買われ単独で指数を約474円押し上げ、半導体検査装置のアドバンテストも810円高の3万3090円(+2.51%)となって約196円寄与したとみられる。この2銘柄だけで806円のうち8割強を説明できてしまう計算だ。一方、東証全体の値動きをより素直に映すTOPIXは前日比1.19ポイント高の4103.23(+0.03%)とほぼ横ばいにとどまった。日経平均は値がさ株の影響を受けやすい価格加重型の指数であるため、値の張るソフトバンクGが動くだけで指数全体が大きく振れやすい。同じ「反発」でも、どちらの指数を見るかで景色がまるで違って見えた一日だったといえる。
ソフトバンクGが買われた材料は、傘下の英アーム・ホールディングス株の上昇に加え、米オープンAIが新型モデルを一部企業向けに提供開始すると伝わったことだった。同社の運用資産はアームとオープンAI関連で7割超を占めるとされ、この2社の動向がそのまま株価を左右する構図になっている。前日3日の米ハイテク株高の余韻も残っていた格好で、アドバンテストへの買いも同様に米半導体株高を受けた見直し買いだったとみられる。
半導体関連では他にも動きがあった。NAND型フラッシュメモリー大手のキオクシアホールディングスが5.40%高、AI基板(ICパッケージ基板)を手がけるイビデンが3.83%高、データセンター向け光通信ケーブルを扱うフジクラが2.06%高と、いずれもAI・データセンター関連のテーマで買われた銘柄が並んだ。一方で半導体製造装置のレーザーテックは1.51%安と、値がさ株の中では利益確定売りが優勢になる場面もあり、「半導体なら何でも買われた」わけではなく、記憶用メモリーやAIインフラに直結する銘柄に物色が集中した一日だった。
4日の米国市場では、8月の雇用統計が波乱を呼んだ。非農業部門雇用者数の増加は16万2000人と、市場予想の5万5000人を大きく上回る強さで、失業率も4.1%と横ばいを維持した。前日3日はFRBのウォラー理事のハト派発言で9月利上げ観測が後退し株高となっていたが、この強すぎる雇用統計が一転して利上げ再開への警戒を呼び戻し、NYダウは271ドル86セント安の5万3414ドル25セント(-0.51%)、S&P500は0.38%安の7718.60、ナスダック総合は0.29%安の2万6506ドル99セントと、主要3指数がそろって下落する展開になった。米10年債利回りは4.78%前後で高止まりし、前日の急低下分を早くも打ち消す形となった。
この地合いの中で特に売られたのが、金利上昇の影響を受けやすい大型ハイテク株や高PERの成長株だった。アップルが2.55%安、アルファベットが2.10%安となったほか、テスラは5.9%安、パランティア・テクノロジーズも4.5%安と大きく下げた。将来の利益を織り込んで買われてきた銘柄ほど、金利上昇による割引率の上昇が株価の重荷になりやすい。なお同じ日に18%近く急落したルルレモン・アスレティカは事情が異なり、四半期の既存店売上高が9%減という業績悪化と通期見通しの再引き下げが直接の原因で、マクロの金利要因というより自社固有の業績問題という色合いが強い。
興味深いのは、同じ金利上昇局面でもメモリー半導体株だけは逆行高したことだ。サンディスクは12%近く上昇して株価は1700ドル台に乗せ、マイクロン・テクノロジーも6.1%高、マーベル・テクノロジーも7%高となった。背景にあるのはAIデータセンター向けの需要急増によるDRAM・NANDの品薄で、契約価格はDRAMが前四半期比5〜6割、NANDフラッシュは7割5分〜倍という水準で上昇しているという。金利という金融相場の変数よりも、実際にモノが足りていないという需給相場の変数の方が強く効いている格好で、この日の株式市場は「金利に弱い株」と「品薄で買われる株」がはっきり分かれる一日になった。
為替市場ではドル円が156円36銭前後と、前日比67銭ほど円高方向に振れた。米長期金利が4.78%前後で高止まりする中でのドル安・円高は一見素直ではない値動きで、米金利だけでなく日銀の追加利上げ観測など日本側の材料も相応に効いている可能性がある。金価格は3日夜に一時4545ドルまで急伸した反動もあって伸び悩み、週末時点では4429ドル前後まで軟化した。急ピッチな上昇の後だけに、目先は利益確定売りが出やすい局面といえそうだ。
ビットコインは4日、一時8万2000ドル近辺まで買われる場面があったが、その後は上昇が一服し、週末にかけて7万9700ドル前後まで押し戻されている。8月後半からの上昇基調そのものが崩れたわけではなく、急伸後によくある短期的な調整とみるのが自然だろう。株式市場が休みの週末でも為替・金・暗号資産は動き続けており、月曜の東京市場の始値を占ううえでは、この週末の値動きも手がかりの一つになる。
Movers — きょう大きく動いた銘柄・資産
傘下の英アーム・ホールディングス株の上昇と、米オープンAIが新型モデルの提供を開始したとの報道を好感した買いが集中した。
前日の米半導体株高を受けた見直し買いが入り、AI関連の設備投資拡大期待も引き続き支えになった。
AIデータセンター向け需要によるNAND型フラッシュメモリーの品薄・値上がり観測を追い風にした買いが継続した。
AIサーバー向けICパッケージ基板の需要拡大期待から、半導体関連の物色の中であらためて買われた。
データセンター向け光通信ケーブルの需要拡大期待を背景に、AI関連インフラ株として買いが入った。
明確な悪材料は見当たらず、値がさ半導体株の中で利益確定売りが優勢になったとみられる。
AIデータセンター向けNAND型フラッシュメモリーの需要急増と契約価格の急騰を受け、決算内容も好感されて買いが加速した。
サンディスクと同様、DRAM・NANDの品薄と価格上昇という「メモリー半導体スーパーサイクル」の恩恵を受けた買いが続いた。
AI向けデータセンター半導体への需要拡大期待から、メモリー関連株全般への買いの波及を受けた。
四半期の既存店売上高が9%減という大幅な業績悪化と、通期売上高見通しの再引き下げを嫌気した売りが膨らんだ。金利要因ではなく自社固有の業績問題が主因。
雇用統計を受けた利上げ再開観測の高まりで長期金利が高止まりし、将来の利益を織り込んで買われてきた高PER株として売られた。
テスラと同様、金利上昇局面で割高感が意識されやすい高PERのソフトウェア・グロース株として利益確定売りに押された。
きょうの用語解説
AI関連の半導体というとエヌビディアのGPU(画像処理半導体)がまず思い浮かぶが、今回日米の株式市場を動かしたのは、データを「記憶」する役割を担うメモリー半導体だった。メモリー半導体には大きく分けてDRAMとNAND型フラッシュメモリーの2種類がある。DRAMは電源を切るとデータが消える「揮発性メモリー」で、パソコンやサーバーが計算を行う際に一時的にデータを置いておく作業机のような役割を果たす。一方のNAND型フラッシュメモリーは電源を切ってもデータが消えない「不揮発性メモリー」で、SSDやUSBメモリのようにデータを長期間保存しておく倉庫のような役割を担う。AIがデータセンターで大量の学習・推論を行うには、この「作業机」と「倉庫」の両方が大量に必要になる。
メモリー半導体はもともと、汎用品として世界中のメーカーが似た製品を作るため、需要と供給のバランスひとつで価格が数倍にも数分の1にもなる「シリコンサイクル」の中でもとりわけ値動きが荒い分野として知られてきた。今回はAIデータセンター向けの需要があまりに急拡大したため、DRAMの契約価格は前四半期比で5〜6割、NANDフラッシュは7割5分から倍という水準まで跳ね上がっているとされる。マイクロンやサンディスクの業績が急拡大し、日本のキオクシアの株価にも同じ流れが波及しているのは、この「メモリー半導体スーパーサイクル」と呼ばれる状況が背景にある。ただし価格が上がれば各社は増産に動くのが常で、いずれ需給が緩めば逆方向のサイクルに転じうる点は、この分野に昔から共通する特徴でもある。
きょうのなぞなぞクイズ