むずかしい値動きを、やさしい言葉で。
Today's Market
Market Snapshot — 主要指標
4日の東京株式市場で日経平均株価は5営業日ぶりに反発した。前日3日は寄り付きで一時400円近く上昇する場面がありながら、結局は4営業日続けての下落となり、6万4214円48銭で終えていた。この続落基調を止めたのが、4日朝からのソフトバンクグループへの猛烈な買いだった。同社株は一時10%を超える上昇となり、傘下の英アーム・ホールディングスの株価上昇や米ハイテク株高の波及を材料に買われ、1銘柄だけで日経平均を約413円押し上げたともいわれる。日経平均は前引けにかけて前日比555円26銭高の6万4769円74銭まで上げ幅を広げ、正午過ぎには一時577円93銭高の6万4792円41銭まで上昇する場面もあった。
興味深いのは、同じ日の東証株価指数(TOPIX)が対照的な動きを見せたことだ。寄り付き直後の午前9時台にはTOPIXが前日比28ポイントあまり下落する場面があった一方、日経平均はすでにプラス圏で推移していた。日経平均は225銘柄の株価を単純平均する『価格加重型』の指数で、値がさ株であるソフトバンクグループ1銘柄の値動きが指数全体に与える影響が非常に大きい。一方のTOPIXは時価総額で加重するため、ソフトバンクG以外の大多数の銘柄の動きがより素直に反映される。同じ東京市場の『反発』でも、見ている指数によって景色がまったく違って見えた一日だったといえる。
半導体・AI関連ではキオクシアホールディングスが前日比6.02%高の5万4780円まで上昇し、値がさハイテク株の一角として指数を下支えした。前日3日にはFRBの早期利上げ観測後退で為替が『有事のドル買い』から一転円高に振れ、日銀の高田創審議委員の発言もあって輸出株には逆風が吹いていたが、4日はドル円が157円台半ばまで戻し、円高一服が自動車株など他業種にも安堵感を広げた。もっとも、値上がりの中身を見る限り、4日の主役はやはりソフトバンクグループだったというのが実情に近い。
3日の海外市場を動かした最大の材料は、FRBのウォラー理事が現地時間3日朝に語った発言だった。同理事は来週発表される8月の米消費者物価指数(CPI)が想定の範囲内にとどまれば、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送ることを支持してもよいとの考えを示した。この発言を受けて市場が織り込む9月の利上げ確率はおよそ70%から48%まで一気に低下し、米長期金利は10年債利回りで4.78%まで低下。NYダウは前日比624ドル16セント高の5万3686ドル11セント、S&P500は同1.06%高の7747.71、ナスダック総合は同1.4%高の2万6584ドル06セントと、主要3指数がそろって1%超の上昇となった。
『利上げが遠のく』という同じニュースが、金価格を4.72%押し上げ、ビットコインも5%超上昇させた点は見逃せない。将来の政策金利が低く抑えられるとの見方が強まると、利子を生まない金や値動きの荒い暗号資産のような『金利に対して割高感が出やすい資産』が相対的に買われやすくなる。VIX恐怖指数も14.31まで低下し、株式市場のリスク回避姿勢が和らいだことも確認できた。ところが同じ3日夜、まったく別の理由でWTI原油は前日比5.11%安の1バレル=80.34ドルまで急落した。トランプ大統領がイランへの追加攻撃を見送る方針だと伝わり、中東情勢の緊迫が一服したためだ。『金利低下は資産価格全般の追い風になる』という単純な図式だけでは、この日の原油の動きは説明できない。地政学リスクという金利とは別の変数が、原油には強く効いていたことになる。
Movers — きょう大きく動いた銘柄・資産
傘下の英アーム・ホールディングス株の上昇や米ハイテク株高を追い風に一時10%超の上昇となり、1銘柄で日経平均を約413円押し上げるほどの動きとなった。
AI・半導体テーマへの物色が続くなか、米ハイテク株高や国内の値がさ半導体株への買いに連れて上昇した。
FRBウォラー理事のハト派発言を受けた米長期金利低下で、金利に敏感なソフトウェア・グロース株への買いが集中した。
同様に金利低下を好感したソフトウェア株全般への買いの波及を受けた。
四半期売上高が前年同期比221%増という好決算を発表したにもかかわらず売られた。事前の期待値がすでに高く、材料出尽くし感からの利益確定売りが優勢になったとみられる。
きょうの用語解説
4日の値動きで少し不思議に思えるのが、FRBのウォラー理事がハト派寄りの発言をしただけで、株だけでなく利息を一切生まない金(GOLD)や、通貨として使われているわけでもないビットコインまで一斉に上昇したことだ。この動きを理解するカギになるのが「実質金利」という考え方である。実質金利とは、銀行預金や国債の利回りのような『名目金利』から、物価上昇率(インフレ期待)を差し引いたものを指す。仮に名目金利が下がっても、インフレ期待がそれ以上に下がらなければ、実質金利はさらに大きく低下することになる。
金やビットコインのように、それ自体は利息や配当を生まない資産を持つことの『機会費用』は、この実質金利の水準によって決まる。実質金利が高いときは、金を持たずに国債を持っていれば確実に増えるお金を手放している格好になり、金の魅力は相対的に下がる。逆に実質金利が下がると、その機会費用が小さくなるため、利息を生まない資産でも持つ理由が生まれやすくなる。4日はウォラー理事の発言で9月の利上げ観測が後退し、名目金利(米10年債利回り)が4.78%まで低下したことで、市場が意識する実質金利も低下方向に働いたとみられ、これが金とビットコインをほぼ同時に押し上げた共通の理由だと考えられる。ただし金とビットコインでは値動きの背景にある投資家層や流動性の性質がかなり異なるため、『実質金利が下がれば必ず両方が同じだけ上がる』という単純な関係が常に成り立つわけではない点には注意が必要だ。
きょうのなぞなぞクイズ