むずかしい値動きを、やさしい言葉で。
Today's Market
Market Snapshot — 主要指標
1日の東京市場、日経平均株価は前日比426円安で取引を始め、その後も下げ幅を拡大。前引けにかけては一時700円超安い水準まで売られ、前引け時点では前日比261円60銭安の6万6050円33銭だった。きっかけは前日31日の米国市場。米国とイランが中東で応酬し、原油相場の急伸とともに米長期金利が4.7%台後半まで上昇したことで、NYダウ・S&P500・ナスダック総合がそろって小幅安となり、この流れがそのまま週明けの東京に持ち込まれた。
ただし、この日の下げをより強く方向づけたのは、日本自身の材料だった。午後に入り、新発10年物国債の利回りが一時3%台に乗せ、1996年9月以来およそ30年ぶりの高水準を記録した。日銀の早期利上げ観測に加え、財政悪化への警戒感が重なった結果だ。長期金利の上昇は、将来の利益をいま現在の価値に割り引く際の割引率を押し上げるため、東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)のような株価収益率の高い値がさの半導体関連株が狙い撃ちされる形で売られた。東京エレクトロンは前日比3.37%安、アドバンテストは同1.93%安となり、日経平均の値下がり寄与度でこの2銘柄が1位・2位を占めた。
一方で、朝方から10時台にかけては銀行株に底堅さが見られた。長期金利の上昇は貸出金利と調達金利の差(利ざや)の拡大期待につながりやすく、値がさの半導体株が売られる裏側で銀行株には押し目買いが入った。結局、日経平均は後場にかけて急速に下げ幅を縮め、終値は前日比96円59銭安の6万6215円34銭で着地。朝方の下げ幅の1割強まで戻したことになる。対照的にTOPIXは前日比35円48銭高の4,191円77銭と続伸しており、日経平均とTOPIXの符号が分かれるのは前日31日に続いて2日連続となった。値がさ株の値動きに左右されやすい日経平均と、銘柄の重みが時価総額で分散されるTOPIXという性格の違いが、金利上昇局面でとりわけ表れやすい格好だ。
前日31日の米国市場は、日曜にかけて米軍とイランが中東ホルムズ海峡付近で応酬したことを受け、地政学リスクが再燃した一日だった。NY原油先物は前日比2%超上昇し、エクソンモービルが同1.5%高、ハリバートンが同1.9%高となるなど、エネルギー株には資源高を素直に好感した買いが入った。一方で株式市場全体では、原油高がインフレ再燃・金利上昇観測につながるとの警戒から利益確定売りが優勢となり、S&P500は同0.36%安、NYダウは同0.57%安で終えている。
この日、値動きという点でイラン情勢以上に振れが大きかったのが、カリフォルニア州の電力株だ。同州議会が週末に可決した山火事対策の改正法案に、投資家が期待していた「1件あたりの賠償上限」などの責任軽減規定が盛り込まれなかったことが嫌気され、PG&E(太平洋ガス・電力)が前日比18%超安、同業のエジソン・インターナショナルは同23%安と急落した。同じ日の米国株の中でも、イラン情勢という地政学リスクと、カリフォルニア州の州法という国内固有の規制リスクという、まったく系統の異なる2つの材料が同時に株価を動かしていたことになる。なお、ソフトバンクグループ(9984)は週末にかけてOpenAI向け資金支援報道やIPO観測が相次いだ影響で先週末31日時点まで上昇基調が続いており、AI関連の中でも「投資会社」としての性格を持つ銘柄は、金利観測よりも投資先企業の評価額期待で動く場面が目立っている。
Movers — きょう大きく動いた銘柄・資産
前日31日の米国発の金利上昇・原油高を受けた米株安に加え、この日午後に日本の新発10年国債利回りが30年ぶりに3%台に乗せたことで、割引率上昇の影響を受けやすい値がさの半導体製造装置株に売りが集中した。日経平均の値下がり寄与度トップ。
東京エレクトロンと同じく長期金利上昇を嫌気した売りが続いた。日経平均の値下がり寄与度で2位。
米軍とイランが中東で応酬したことを受けてNY原油先物が急伸し、石油関連株全般に買いが入った。
カリフォルニア州議会が可決した山火事対策の改正法案に、投資家が期待していた損害賠償責任の上限規定などが盛り込まれなかったため、同州の電力会社株が一斉に売られた。
PG&Eと同じ理由(カリフォルニア州の山火事関連法案が責任軽減規定を欠いたまま可決)で、同州の電力株が軒並み急落した。
きょうの用語解説
ニュースで報じられる「長期金利が3%に達した」「10年債利回りが4.7%台」という数字は、正確には「名目金利」と呼ばれる。これに対して、名目金利からその期間に見込まれるインフレ率(インフレ期待)を差し引いたものを「実質金利」と呼ぶ。ざっくり言えば、名目金利=表面上の利回り、実質金利=物価上昇分を除いた「本当の」お金の増え方、というイメージだ。1日は日本の長期金利が1996年以来およそ30年ぶりに3%台に乗せたことが話題になったが、同時にインフレ期待も高まっているのであれば、実質金利の上昇幅は名目金利の見た目ほど大きくない可能性がある。逆に、インフレ期待が横ばいのまま名目金利だけが上がっているなら、実質金利はより大きく上昇していることになる。
株式市場、とりわけ東京エレクトロンやアドバンテストのような、今の利益より将来の成長期待で株価が形成されやすい値がさの半導体株にとって重要なのは、この実質金利の動きだ。将来の利益を現在の価値に割り引く「割引率」は実質金利に連動しやすく、実質金利が上がるほど、遠い将来の利益に依存する株の理論株価は下がりやすい。一方、銀行株は名目金利が上がるだけで貸出と調達の利ざやが広がりやすく、インフレ期待の変化にはあまり左右されない。1日の東京市場で半導体株が売られ、銀行株に底堅さが見られたのは、この「名目金利で得する業種」と「実質金利で損する業種」の違いが同時に表れた結果だと理解すると、値動きの意味がクリアになる。
きょうのなぞなぞクイズ